ベーゼ・モア
製作 : フランス・2000年・74分
監督 : ヴィルジニー・デパント、コラリー・トラン・ティ
脚本 : ヴィルジニー・デパント、コラリー・トラン・ティ
出演 : ラファエラ・アンダーソン、カレン・バック、デルフィーヌ・マッカーティー、リサ・マーシャル
BAISE-MOI★★★☆☆☆
女流作家ヴィルジニー・デパントの自作小説を、友人の元ポルノ女優コラリー・トラン・ティと共同で映画化。互いに大事な人を殺し、運命的に出会った女の子、マニュとナディーヌ。2人は意気投合し、一緒にあてのない逃避行の旅に出る事に。現金や銃を強奪し、男を誘惑してセックスしては殺していく2人だったが、徐々に警察の手が迫ります。
本国フランスで内容の過激さから上映禁止騒動が巻き起こった問題作。冒頭のレイプシーンや無意味な殺戮、多数のセックスシーンなど、観ていて心地良い描写はほとんどなし。そして、自分にとって大切な人を自らの手で殺害してしまった、マニュとナディーヌ。マニュは兄を、ナディーヌはルームメイトを殺害。自らが殺害したとはいえ、2人共が大切な人を失ったせいか、行動のブレーキや理性は全くありません。ただ、ほとんどゲーム感覚で人間を次々に殺害していくのみです。
が、ラストでは好き放題していた2人に天罰が。2人のしてきた事を考えると当然の結果と言えるのですが、マニュが亡くなった時、不思議と悲しい気持ちになったりも。そして、マニュの亡き後、ナディーヌが自殺を試みようとした気持ちが少しだけ分かるような気もします。2人に共感する事はなかったですが、同じように嫌悪感を抱く事もなかったです。

八仙飯店之人肉饅頭
製作 : 香港・1993年・100分
監督 : ハーマン・ヤオ
脚本 : ラオ・カムファイ
出演 : アンソニー・ウォン、ダニー・リー、シン・フイウォン、ラウ・スーミン、パクマン・ウォン
八仙飯店之人肉焼飽★★★☆☆☆
マカオで実際に起こった猟奇殺人事件を基に映画化。中華料理店の店主からマージャンで勝った金を取ろうとした事から店主一家7人を殺害、その死体を肉マンの具にして販売していた店員ウォン。店の経営者が変わった事から不審に思った警察は、ウォンを調査する事に。その調査の結果、ウォンの犯行が明るみになり、彼は逮捕されます。
自分にとって不都合な人間を殺害、証拠隠滅のために人肉を使って調理し、肉マンとして販売していたウォン。そうとは知らない客が、その肉マンを「美味い美味い」と食べるシーンは、吐き気を感じるくらいに気持ち悪いです。口元を必要以上にアップにしたり、肉マンの生地の間から人肉の具を見え隠れさせるなど、演出も徹底したもの。が、その気持ち悪さを払拭させるためか、警官達の日常はかなりコミカル。警部が常に娼婦をはべらせている事に、唖然としてしまいます。
ウォンは精神的に凄く子供。殺害に至った理由も、ただ自分の思い通りに事が運ばなかっただけ。自分は他人を平気で傷つけるくせに、いざ自分が攻撃される側に回るととてつもなく弱いです。ただ、いくらウォンが凶悪な事件の犯人とはいえ、警察達の暴行は行き過ぎな面も。全体的に残酷な描写が多いので、血を見るのが苦手な人は避けた方が無難です。

ポネット
製作 : フランス・1996年・99分
監督 : ジャック・ドワイヨン
脚本 : ジャック・ドワイヨン
出演 : ヴィクトワール・ディヴィソル、マリー・トランティニャン、グザヴィエ・ボーヴォワ
PONETTE★★★☆☆☆
愛する母親を事故で失った、幼い少女ポネット。彼女は母親が亡くなった事を理解出来ず、いつかきっと会いに来てくれると信じ続ける日々。そんな彼女を見た周囲の大人達は、彼女に死の意味を教えるものの、ポネットは逆に自分の世界に閉じ籠ってしまう事に。そんな時、彼女の前にある奇跡が訪れ、彼女の信じていたものが姿を現します。
母親の死を理解出来ない4歳のポネット。彼女が母親にもう一度会おうと色々な事を試みる姿は、可愛くもあり悲しくもあるものでした。そのポネットを演じるヴィクトワール・ディヴィソルの演技力にただただ感心。彼女が涙を流すシーンは、あまりにリアルで観ていて悲しい気持ちになるほど。そして、ポネットの友達の些細な一言が本当に痛々しいです。子供ゆえの残酷な言葉。子供は素直な分、大人よりも残酷だとしみじみ感じます。勿論、悪気がないのは分かっているのですが。
ただ、人の死を奇跡だけで片付けてしまう事に、少し不満が残ります。酷かもしれないけれど、ポネットが現実的に母親の死の意味を理解し、受け入れる姿を見せてほしかったな、と。確かに母親と会ってからのポネットは少し前向きになったけれど、実際に母親の死が理解出来たかは曖昧。とはいえ、やっぱりポネットは可愛い!ラスト以外は満足です。

昼下りの情事
製作 : アメリカ・1957年・134分
監督 : ビリー・ワイルダー
脚本 : ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
出演 : オードリー・ヘプバーン、ゲイリー・クーパー、ジョン・マッギーヴァー、ヴァン・ドード
LOVE IN THE AFTERNOON★★★★☆☆
父親のファイルからアメリカの富豪フラナガンの資料を盗み読み、彼に恋をしてしまった私立探偵クロードの娘アリアーネ。ある日、フラナガンに逢う機会を得たアリアーネは、恋愛に慣れたプレイガールのフリをして彼に近づく事に。フラナガンはその不思議な女性に徐々に惹かれていき、アリアーネはますますフラナガンへの想いが深くなります。
オードリーがやっぱり可愛い!プレイボーイのフラナガンに合わせるために背伸びする姿、ラストで旅立つ彼に向かって精一杯強がる姿、その全部が全部、本当に可愛いです。そして、脇を飾る人達がこれまた魅力的。特に、タクシーの中でもサウナの中でも、演奏を続ける音楽隊がお気に入り。彼らがサウナでバイオリンに溜った水を出すシーンは思わず爆笑。いつも思うけれど、ビリー・ワイルダー監督の小道具使い(嫌味が全然なくて小気味いい、オシャレ!)は本当に絶妙です。
また、アリアーネの父親クロードも印象深い存在。娘が事件簿の常連であるフラナガンと関係があると知っても、彼は2人を責める事も怒る事もしません。ただ静かにフラナガンに街から旅立つようにお願いするだけ。さらに、ラストでの彼の笑顔に思わずホロリ。父親としての優しさ、暖かさをサラリと描きながら、それをしみじみと感じさせてくれます。

ボディガード
製作 : アメリカ・1992年・135分
監督 : ミック・ジャクソン
脚本 : ローレンス・カスダン
出演 : ケヴィン・コスナー、ホイットニー・ヒューストン、ビル・コッブス、ゲイリー・ケンプ
THE BODYGUARD★★☆☆☆☆
命をかけて守る事、そして決して恋に落ちない事を信条にする敏腕ボディガード、フランク。彼は脅迫状を次々と送り付けられる女性シンガー、レイチェルを警護する事に。が、レイチェルは我儘な上に非協力的で、フランクはなかなか思うように警護が出来ず、2人の仲は険悪状態。そんな中、レイチェルを狙う魔の手は徐々に過激さを増していきます。
ボディガードのフランクに対して非協力的なレイチェル。少しは協力的になったかと思えば反発する、その繰り返し。レイチェルは最初から最後まで中身が子供のままで、あまり好きになれませんでした。そして、ボディガードのフランクも大いに問題あり。何よりも仕事優先の考えを持っているにも関わらず、レイチェルの誘惑にあっさりと負けてしまう始末。これが本当に敏腕のボディガード?、と疑問に感じてしまいます。ただ、ケヴィン・コスナー好きにはおいしい映画なのではないかと。
が、この映画の一番の魅力は、ホイットニー・ヒューストンの歌声を聴ける事。ステージでの衣装も奇抜で、彼女のファンは楽しめると思います。その反面、ストーリーはかなり安易。真の犯人もあっさりと読めてしまうし、依頼を受けた殺し屋がたまたまフランクの元同僚というのは、あまりに強引で出来すぎです。それでも、公開時はかなり話題になりました。

ボーイズ・ドント・クライ
製作 : アメリカ・1999年・119分
監督 : キンバリー・ピアース
脚本 : キンバリー・ピアース、アンディ・ビーネン
出演 : ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー、ピーター・サースガード、ブレンダン・セクストン三世
BOYS DON'T CRY★★★★☆☆
1993年、ネブラスカ州リンカーン。少年の格好をし、町に出かける用意をしていた、20歳のブランドン。従兄でゲイのロニーは「フォールズ・シティの連中はオカマを殺す」と警告するが、ブランドンはそこへ行き、バーで出会ったラナと恋に落ちる事に。が、ある事件がきっかけでブランドンの”秘密”が明るみになった時、悲劇が始まります。
体は女性、心は男性としての感情を持っていた、性同一性障害のブランドン。彼は普通の男性と同じように、ひとりの女性に恋をしただけ。彼の普段の表情からは感じられませんが、多くの悩みがあったと思います。結果的に仲間や恋人を欺いている事、本当は女性である事をいつ打ち明けるかという事。が、彼は常に自分の心に正直。彼の真っ直さと彼を襲った悲劇を考えると、性同一性障害が理解されない現実に憤りを感じます。が、理解出来ない気持ちも分からなくはないです。
理由はどうあれ、ブランドンに騙されたという怒りの感情を、周りの人間が抱くのは仕方がないとは思います。ただ、暴行にレイプはやっぱり酷すぎ。少なからずブランドンにも非があったかもしれませんが、その代償としてはあまりに大きすぎるもの。全体的に、暴力を前面に押し出した映画。実話という事もあってか、彼に起こった出来事に焦点が当てられています。

フルメタル・ジャケット
製作 : アメリカ・1987年・116分
監督 : スタンリー・キューブリック
脚本 : スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
出演 : マシュー・モディーン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ
FULL METAL JACKET★★★★☆☆
1967年、ベトナム戦争下。南カロライナ州にある海兵隊新兵訓練基地に入隊したジョーカー、パイル、カウボーイら若者達。彼らは8週間という期間の中、徹底した軍隊教育を受ける事に。その教育は、教官ハートマンによる非人間的なしごきによって、彼らを非情の殺人マシーンに変えていくもの。やがて、彼らは実際の戦場へと送り込まれます。
前半は訓練学校での教育の様子、後半は戦場での体験という2部構成の作り。前半部分では下ネタや体型的、人種的な差別に近い用語や皮肉が多く飛び交います。その中で一番印象に残っているのが、微笑みデブと彼が受ける集団リンチ。訓練学校の中で本来の自分を保てていたのは微笑みデブだけだったような気がしますが、集団リンチによって糸が切れ、彼は自我を失う事に。微笑みデブが教官を射殺するシーン、狂気に冒された微笑みデブの顔アップは、何よりも印象に残ります。
後半部分は、ただの殺人兵器となった彼らの姿、街中での戦闘の様子が描かれます。前半ほどのインパクトはありませんが、後半も結構好き。そして、ラストではミッキーマウスの歌を歌いながら歩く兵士達。年齢問わず、幅広く人気のあるミッキーマウスの曲を戦争映画のラストに持ってくる、キューブリック監督の皮肉っぷりがまた良いです。

ブラック・マスク
製作 : 香港・1996年・99分
監督 : ダニエル・リー
脚本 : ツイ・ハーク、コアン・ホイ、テディ・チャン、ジョー・マ
出演 : ジェット・リー、ラウ・チンワン、カレン・モク、フランソワーズ・イップ、アンソニー・ウォン
黒侠★★★☆☆☆
北のある国で人間に改造手術と洗脳を行い、無敵の戦士を作り上げるプロジェクトが進行。彼らは”701部隊”と呼ばれたが、政府は実験の中止を決定し、彼らの抹殺を目論む事に。が、唯一洗脳を免れたブラック・マスクは、この謀略を察知し脱走に成功。香港で平穏な生活を送る彼だったが、やがて何者かに命を狙われるようになります。
ジェット・リーが相変わらずの切れの良いアクションを披露。技ひとつ、動きひとつが本当に綺麗です。対するヒロインのカレン・モクは、ちょっとおバカで天然が入った無邪気な女性役。登場するだけで場の空気を和ませてくれて、少しほのぼのとした気持ちになります。そして、ブラック・マスクと彼の教え子との対決。いつかのように他人を守ろうとする彼の姿、彼が今も昔も変わってない事、彼を目指したはずなのに道を誤ってしまった自分、教え子の葛藤が感じられます。
ラストの締めは呆気なさを感じるものの、それまでの過程のアクションには満足。人間関係も出来すぎていますが、それでも楽しめる映画。ただ、ジェット・リーがつけるブラック・マスクの仮面、どうも段ボール製に見えてしょうがなかったです。何で出来てるにしても、あの仮面はちょっとヘボすぎ。が、その手抜きさも結構好きです(笑)

博士の異常な愛情
または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
製作 : イギリス+アメリカ・1964年・93分
監督 : スタンリー・キューブリック
脚本 : スタンリー・キューブリック、ピーター・ジョージ、テリー・サザーン
出演 : ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、キーナン・ウィン
DR. STRANGELOVE: OR HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB★★★★★☆
アメリカ軍基地の司令官が、ソ連の核基地の爆撃命令を発令。一方、ソ連には核攻撃に自動で対抗する人類滅亡爆弾が存在。司令官の狂気を知った副官が司令官を止めようとするものの、逆に監禁されてしまう事に。ソ連と連絡を取って事態の収拾を図る大統領。が、迎撃機によって無線を壊された1機が、ついに目標に到達してしまいます。
東西冷戦下の60年代に作られただけでも驚きなのに、この映画では実際にソ連に核爆弾を投下するというブラックさ。ここまでやってくれると恐怖を超えて可笑しいです。そして、確かに核爆弾は恐ろしいもの。が、核爆弾を作ったのは人間、操作するのも人間、決断を下すのも人間。本当に恐ろしいのは核爆弾ではなく、人間だという事をブラックさの中で教えてくれます。この映画のサブタイトルのように核爆弾を愛する事は出来ないけれど、核爆弾に罪がないのは分かります。
そして、ピーター・セラーズのひとり3役がかなりの見もの。特に、車椅子の博士が印象的。彼がラストで立ち上がるのは、自分は必要な人間で生き残るべき人間、とあからさまに訴えているような気がします。好みが分かれるかもしれませんが、私はかなり好きな映画。スタンリー・キューブリック監督作の中でも、この映画が一番好きです。

鉄道員(ぽっぽや)
製作 : 日本・1999年・112分
監督 : 降旗康男
脚本 : 岩間芳樹、降旗康男
出演 : 高倉健、大竹しのぶ、広末涼子、吉岡秀隆、安藤政信、志村けん、小林稔侍
鉄道員(ぽっぽや)★★★☆☆☆
浅田次郎の同名短編小説を映画化。北海道のローカル線、幌舞駅の終着駅・幌舞。駅長・佐藤乙松は筋金入りのぽっぽや。彼は職務に忠実なあまり、生後2ヶ月で死んでいった娘や思いがけない病で死んだ妻を見取る事さえ出来なかった、という過去が。そんな佐藤も近く廃線になる幌舞線と共に定年。そんなある日、不思議な少女が現れます。
雪景色が本当に綺麗。風景のひとつひとつが心に残ります。そして、定年を間近に迎えた佐藤乙松。仕事に忠実、ひたすら寡黙な役は高倉健にピッタリ。が、渋さには文句はないのですが、セリフが聞き取りにくい場面がチラホラ。それがちょっとストレスになったりもしました。ただ、見取れなかった妻と子供、その悲しみが乙松の背中から滲み出ています。その乙松に訪れた少女との出会いは、儚くも優しく、暖かいもの。過去のエピソードの挿入も全く違和感を感じさせません。
まだ私にはこの映画の良さが分からないけれど、しみじみと人生について考えたい時、振り返りたい時には最適な映画かと。おばあちゃんになった時に観直してみたい1本。ちなみに、炭鉱労働者として志村けんが出演。彼が酔っ払う様は変なおじさんとダブって見えますが、当時の現状をしっかりと表しているかと。高倉健より志村けんの方が印象に残ってます。