イノセントワールド
製作 : 日本・1998年・97分
監督 : 下山天
脚本 : 小川智子
出演 : 安藤政信、竹内結子、伊藤かずえ、豊原功補、長谷川初範、范文雀、山崎一
イノセントワールド★☆☆☆☆☆
桜井亜美の同名小説を映画化。頭の中で自分の名前を呼ぶ何者かの声に悩まされていた女子高生アミ。彼女は17歳の誕生日、自分が今の父親の本当の子供ではないと知る事に。彼女の母親は知的障害を持つ兄タクヤを生んだ事にショックを受け、次の子供であるアミを人工受精で出産。ある日、アミはタクヤを連れて父親を探す旅に出ます。
自分の本当の父親を探すアミ、心に残るウサギを探すタクヤ。が、見付かったアミの父親は、人のためにも自分のためにも生きている価値が見出せない無気力な人。彼の妻も夫に感化され、以前の自分を見失っている状態。そんな2人がアミとタクヤの出現によって徐々に自分らしさを取り戻していくわけですが、全てがどうにも中途半端。そして、もうひとつ探しものであるタクヤのウサギは、序盤からあっさりすぎるくらいあっさりと読めてしまえるもの。テンポも悪く、どうにも間延びした印象を受けます。
アミの頭の中で聞こえていた声の正体、タクヤが探すウサギ、最終的にそれぞれの探しものを見付けた2人。アミとタクヤがお互いを必要としていたこと、アミの父親と彼の妻が自分らしさを取り戻したこと、ふたつのテーマがあるものの、どちらもが消化不良な描き方。安藤政信目当てで観てみたわけですが、どうにも入り込めない映画でした。

オリエント急行殺人事件
製作 : イギリス・1974年・128分
監督 : シドニー・ルメット
脚本 : ポール・デーン
出演 : アルバート・フィニー、ジャクリーン・ビセット、アンソニー・パーキンス、マイケル・ヨーク
MURDER ON THE ORIENT EXPRESS★★★☆☆☆
アガサ・クリスティーの小説「オリエント急行の殺人」を映画化。1935年、イスタンブールからパリ経由でカレーに向かう大陸横断国際列車オリエント急行。様々な乗客が乗っていたが、その中には名探偵エルキュール・ポアロの姿も。が、2日目の深夜、雪で列車が立往生している中、ポアロの隣室の客ラチェットが殺害されているのが発見されます。
TVドラマ版の「名探偵エルキュール・ポアロ」は未見ですが、アルバート・フィニーのポアロ役も悪くはないかと。小説から想像していたポアロ像と比べて、違和感はあまり感じませんでした。そして、雪の中を走るオリエント急行での殺人事件。残忍な殺害手口が物語っているように、過去に大きな罪を犯し、多くの人から恨まれていた被害者ラチェット。が、密室に近いオリエント急行、容疑者は乗客のみという限られた人数、さらに凶器や証拠品が次々に発見され、それらにポアロは悩まされていきます。
そんな中、ポアロが出した推理は2通り。最終的に選ばれた推理は決して正義ではありませんが、多くの人たちの悲しみを理解した人情味溢れるもの。殺人を扱っている事もあって暗さや重さを感じさせますが、ポアロの友人のコミカルな発言がそれを和らげています。ちなみに、イングリッド・バーグマンやショーン・コネリーなど、キャストが本当に豪華!

イギリスから来た男
製作 : アメリカ・1999年・89分
監督 : スティーヴン・ソダーバーグ
脚本 : レム・ドブス
出演 : テレンス・スタンプ、ピーター・フォンダ、ルイス・ガスマン、バリー・ニューマン
THE LIMEY★★☆☆☆☆
ひとり娘のステイシーが事故死したという手紙を受け取った、9年間の刑務所暮らしを終えて出所したウィルソン。娘の死の真相を確かめるべく、手紙を出した彼女の友人エドを訪ねたウィルソンは、大物音楽プロデューサーのテリーの存在を知る事に。ステイシーはテリーが相棒エイヴリーと組んで仕切るヘロイン密売事件に巻き込まれたらしいのです。
もっとバイオレンス色全開の映画かと思いましたが、意外にも淡々とした映画。そして、ウィルソン演じるテレンス・スタンプ。彼が本当に渋いの一言。が、感情の起伏を表に出さない事もあり、娘を亡くした悲痛な思いがそれほど強くは感じられず。その彼だけでなく、他の登場人物も感情が希薄に見えてしまい、どうにも感情移入が出来なくて気分的に乗れなかったのが残念。ただ、カメラワーク、映像の綺麗さは全くもって文句なし。テレンス・スタンプのプロモーション映像かのように、ひたすら彼をかっこ良く撮っています。
感情をあまり表に出さないウィルソンですが、ラストだけはしっかりと切なさを感じさせてくれます。娘の突然の死という不幸に見舞われたものの、その原因が自分にあった事を痛感したウィルソン。相手を殴る手を止めたのは、自分自身に対する腑甲斐なさ。ウィルソンが娘の死に間接的に関わっていた事実は、あまりに辛く痛々しいです。

青の炎
製作 : 日本・2003年・116分
監督 : 蜷川幸雄
脚本 : 蜷川幸雄
出演 : 二宮和也、松浦亜弥、鈴木杏、秋吉久美子、中村梅雀(2代目)、山本寛斎
青の炎★★★☆☆☆
貴志祐介の同名小説を映画化。母と妹の3人で穏やかに暮らしていた、湘南の高校に通う17歳の秀一。そんなある日、母が10年前に離婚した男・曾根が現れ、家に居座ってしまった事から、平和だった家庭は一変。曾根は傍若無人に振る舞い、母や妹に暴行をはたらこうとする始末。やがて、秀一は自らの手で曾根を殺害する決意を固めます。
アイドルが主演の映画な事もあって、やっぱり演技には難あり。が、序盤はそれが気になりますが、徐々に二宮和也の演技が見れるようになってきます。そして、17歳の高校生とは言っても今時の高校生ではなく、時代は少し古めな懐かしい感じ。その17歳の高校生・秀一が犯罪に手を染める原因は、他に方法はなかったのかと空しい気持ちになります。嫌悪する曾根の為に秀一が犯罪を犯すのは、これから先を思うとあまりに勿体無いもの。が、「今が全て」という考え方も分からなくはないです。
自転車で全力疾走する秀一の姿は、人生を生き急いでいるよう。そして、時折り映される青味がかった映像が印象的。また、それをさらに印象づける音楽が綺麗で切なく、とても儚いもの。ラストの秀一の行動は予想出来ますが、最後まで全力疾走を続けた彼が本当に悲しい。秀一の「好きなもの」を吹き込んだテープも悲しさが余計に増します。

海は見ていた
製作 : 日本・2002年・119分
監督 : 熊井啓
脚本 : 黒澤明
出演 : 清水美砂、遠野凪子、永瀬正敏、吉岡秀隆、つみきみほ、石橋蓮司、奥田瑛二
海は見ていた★★☆☆☆☆
時は江戸、場所は深川。そこは江戸市中から少し離れているものの、粋な江戸ッ子達の本場。“葦の屋”はそんな深川の少し外れにある岡場所。ある日、「遊女は恋をしても、客に惚れちゃいけない」と教えられていた年若いお新は、若侍・房之介を匿う事に。以来、お新の身請けを公言し、足繁く通う房之介にお新の心は揺り動かされていきます。
若侍・房之介に恋をし、あっという間に失恋してしまうお新。房之介の態度も問題と言えば問題でしたが、お新はすぐさま次の恋へ。良介の不幸な身の上話を聞き、それに涙し、ころっと惚れてしまう始末。お新ちゃん、ちょっとどころかかなり客に惚れすぎです(笑)。が、お新の恋がメインに描かれていますが、本当のメインは菊乃の方だったんだと終盤で気付きます。ラストで菊乃が話す「海は見ていてくれた」の一言が印象的。お新に向けての言葉の全ては、菊乃自身にも向けられた言葉でした。
いきなりの大洪水に呆気に取られ、身を晦ますはずの良介の帰還に思わず苦笑したりも。が、菊乃演じる清水美砂、彼女の周りを囲む奥田瑛二、石橋蓮司がかなり良い味出してます。お新組3人より、菊乃組3人が印象的。また、お新と菊乃以外の2人の遊女も印象に残ります。それにしても、遠野凪子が脱いでいる事にちょっとビックリ!

オールド・ルーキー
製作 : アメリカ・2002年・128分
監督 : ジョン・リー・ハンコック
脚本 : マイク・リッチ
出演 : デニス・クエイド、レイチェル・グリフィス、ジェイ・ヘルナンデス、ブライアン・コックス
THE ROOKIE★★★☆☆☆
かつてマイナーリーグでプレーしていたが、肩を壊してメジャーリーガーになる夢を絶たれたジム・モリス。35歳になった現在では、テキサスの高校で教師の傍ら野球部監督を務め、妻と子供に囲まれて平穏に暮らす日々。そんなある日、ジムが部員を指導中、キレのある豪速球を繰り出している事に周囲が驚き、彼自身も肩が治っている事に気付きます。
他の誰よりも一番喜んでほしかった妻からの反対、プロテストに合格してもメジャー入りは約束されていない現実、そして、家族を養う身として収入面など生活への不安、父親としての務めを果たせない不安など、気がかりな事は多々。どんな夢に挫折はつきもので、ジム・モリスも例外ではありません。が、彼の夢を繋ぎ止めたのは、彼の野球に対する想いそのもの。もちろん家族や周りの人たちの声も彼に大きな影響を与えましたが、一番は彼自身の「野球がやりたい」という想い、ただそれだけです。
夢が実現、成功する姿だけでなく、苦悩や挫折といった弱い部分もしっかりと描いてくれたのが印象的。また、彼といつも行動を共にしていた長男が本当に可愛い!父親が三振を取っていく度、三振を意味する「K」の文字を貼っていく姿が大好きです。ジム・モリスの父親の一言も印象深く、どんな時でも夢を諦めないという事を教えてくれる映画です。

イナフ
製作 : アメリカ・2002年・115分
監督 : マイケル・アプテッド
脚本 : ニコラス・カザン
出演 : ジェニファー・ロペス、ビリー・キャンベル、ジュリエット・ルイス、テッサ・アレン
ENOUGH★★★☆☆☆
ダイナーのウェイトレス、スリムは、ある日、ミッチという親切な男と出会い、結婚。スリムはウェイトレスを辞め、建設会社を経営する裕福なミッチとの幸せな結婚生活を始める事に。やがて娘グレイシーが生まれ、3人で何不自由なく優雅に暮らす日々。が、グレイシーが5歳になった頃、ミッチが突然変貌。彼は暴力で家庭を支配しようとしたのです。
スリムに暴力を奮うミッチ、そして俺様主義を主張するミッチに嫌悪感爆発。彼からは愛情が全く感じられず、スリムを自分の所有物として手元に置いておきたい、ただそれだけ。が、有難いことに、この手の映画ではお約束のツッコミどころは満載です。ミッチがグレイシーの父親だから警察沙汰になるのは嫌だと言いますが、あそこまで暴力を奮われ、俺様主義を主張され、それでもなおミッチを庇う事が理解不能。また、ミッチから逃げ出すなら彼のいない時間を狙えば良いのに、と思ったりもしました。
そして映画の後半部分、あまりに強くなったスリム演じるジェニファー・ロペスに爆笑。スリムがあの性悪ミッチを殴りつける様は、前半のストレスを幾分か解消してくれて気分爽快。ただ、いくら正当防衛とはいえ、スリムとミッチの受けたダメージは大きく違いすぎますけど(笑)。何はともあれ、ツッコミ映画としては持ってこいの映画です。

宇宙空母ギャラクティカ
製作 : アメリカ・1978年・120分
監督 : リチャード・A・コーラ
脚本 : グレン・A・ラーソン
出演 : リチャード・ハッチ、ダーク・ベネディクト、ローン・グリーン、ハーバート・ジェファーソン・Jr
BATTLESTAR GALACTICA★★☆☆☆☆
12の植民惑星に生きる人類と、機械人間サイロンの1,000年に及ぶ闘いに終止符を打つべく、指導者を一堂に集めた和平会議が開かれる事に。が、それはサイロンの罠。サイロンの猛攻に全ての植民惑星を失った人類は、唯一生き延びた宇宙空母ギャラクティカを旗艦とし、彼らの故郷で伝説の惑星“地球”を目指して大いなる航海に旅立ちます。
それなりに壮大な設定ですが、実際にはかなり話が散漫な印象を受けます。最大の敵・サイロンとの闘いと駆け引き、味方同士の意見の食い違い、難民となった人類の貧困、恋愛、多くのものを描きたい気持ちは分かりますが、ちょっと欲張りすぎな気がしないでもなく。一番の見どころはサイロンとの闘いと駆け引きになりますが、そのラストも引っ張った割には非常に呆気ないもの。人類が協力してサイロンに打ち勝ったというよりも、ラッキーなことにサイロンが勝手に自滅してくれた感じです。
それでも、SF映画ならではの様々な異星人達が魅力的。「スター・ウォーズ」の影響も大きく受けていますが、人類が辿り着いた惑星の歌手の容姿、顔の各パーツが全てふたつある人種など、想像力を駆使した描写が多々。「スタートレックにいざ勝負!」の一言につられて観ましたが、これはスタートレックの圧勝。勿論、ひいき目もありますが(笑)。

エリザベス
製作 : イギリス・1998年・124分
監督 : シェカール・カプール
脚本 : マイケル・ハースト
出演 : ケイト・ブランシェット、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、クリストファー・エクルストン
ELIZABETH★★★☆☆☆
16世紀のイングランド。エリザベスは、腹違いの姉で彼女をロンドン塔に幽閉したメアリー女王の崩御後、世継ぎとして25歳の若さでイングランド女王に即位。彼女には恋人がいたが、女王として関係の緊迫した隣国との政略結婚を迫られる事に。様々な苦悩が続く中、ローマ法王による謀反計画を知ったエリザベスは、対抗勢力の静粛を行います。
エリザベスを演じたケイト・ブランシェットと同じくらい、彼女の側近を演じたジェフリー・ラッシュが印象的。彼のエリザベスへの忠誠心は絶対、それに加えて的確な判断、時には冷酷にもなれる行動力、その全てがかなり魅力的でした。そして、ユーモア溢れるエリザベスの発言、意表を突いてくれたある男性の女装姿など、真面目なだけの伝記映画ではなく、和ませてくれる要素も多々。さらに、豪華なセットや衣装、ダンスなど、美術面は思わず溜め息が出るほど素晴らしいもの。一見の価値あり、です。
ラストでは、結婚はしないと決意し、イングランドに自らを捧げたエリザベス。彼女が髪を切るシーンの無表情さは恐怖を覚えるほどで、感情を一切捨て真っ白な肌のただの人形になったかのような錯覚を起こします。あんなに無邪気に笑っていた彼女が本来の姿を仮面で覆い、女である事、人である事をも犠牲にしなければいけないのが切ないです。

アイリス
製作 : イギリス+アメリカ・2001年・91分
監督 : リチャード・エアー
脚本 : リチャード・エアー、チャールズ・ウッド
出演 : ジュディ・デンチ、ジム・ブロードベント、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ボネヴィル
IRIS★★★★★☆
1950年代、オックスフォード大学で出会った、アイリスとジョン。あまり目立たない存在だった講師のジョンは、豊かな知性と魅力的な容姿を兼ね備えたアイリスに一目惚れ。やがて2人は結婚し、アイリスは次々と小説を発表、一流の作家に。そして40年の時を経た現在、アイリスは現代の医療では治すことが出来ないアルツハイマー病と診断されます。
若かりし頃の元気で明るく自由奔放なアイリス、現在の少しずつ言葉を失い始めるアイリス、2人のアイリスを対比する事によってアイリスと隣で彼女を見守るジョンの不安が一層際立ちます。特に、現在のアイリスを演じるジュディ・デンチの、徐々に生気がなくなっていく目が印象的。そして、そんなアイリスを一番近くで誰よりも愛し、誰よりも暖かく見守るジョン。時には取り乱しアイリスに怒りをぶつける事もありますが、彼のアイリスを失うかもしれない不安と苛立ちは痛いほどに伝わってきます。
言葉の大半が失われた中、ジョンに向かって呟くように言う「I Love You」が印象的。この一言がこんなに重く、深い映画は他にないかも。アルツハイマーは誰にでも可能性のある病気、その状況で愛し、愛されるのは難しい事。アイリスとジョンの感情を超えた精神的な繋がりを見せてくれると同時に、しっかりと問題提起もしてくれる映画です。