| 浮雲 |
| 製作 : 日本・1955年・124分 監督 : 成瀬巳喜男 脚本 : 水木洋子 出演 : 高峰秀子、森雅之、中北千枝子、岡田茉莉子、山形勲、加東大介、木匠マユリ ★★★★★☆林芙美子の同名小説を映画化。戦時中、赴任先のインドシナで、妻ある男・富岡と出会い愛し合ったゆき子。終戦後、妻と別れて君を待っている、との言葉を信じ富岡のもとを訪れたゆき子だったが、富岡は態度をはっきりさせないまま。途方に暮れたゆき子は外国人の愛人となり富岡のもとを去るものの、ある日、富岡がゆき子を訪ねてきます。 どうしようもないダメ男に惚れてしまったゆき子。もう富岡のことは忘れればいいのにと思うけれど、恋愛は理屈では割り切れないもの。自分の中でもダメだとは思っていても、手を伸ばしたくなる時があったり、少しの可能性に賭けたくなるもの。そんなゆき子の人生に微塵の優しさすら与えないかのように、映画は冷酷に淡々と流れていきます。ひたすら男女が墜ちていく映画ではあるけれど、その様は切なくて悲しく、そして儚くて魅惑的。ある意味、これこそが男女の愛の究極の形、究極の美なのだと思えてきます。 その中で迎えるラストが本当に秀逸。皮肉にも、死してようやく富岡の中で一番大きな存在となったゆき子。その時のゆき子の綺麗さ、富岡がゆき子の唇に紅を引くシーンが印象的。また、ゆき子の死をもって彼女の大きさを知った富岡の回想も、同じように印象に残ります。高峰秀子と森雅之、この二人でなければ傑作「浮雲」は誕生してません。 |
| 愛についてのキンゼイ・レポート |
| 製作 : アメリカ+ドイツ・2004年・118分 監督 : ビル・コンドン 脚本 : ビル・コンドン 出演 : リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、クリス・オドネル、ピーター・サースガード ★★★☆☆☆インディアナ大学の動物学の助教授、アルフレッド・キンゼイ。彼は学生時代、父が望んでいたエンジニアではなく生物学の道を選んだことで父との関係は悪化。その後助教授となり、教え子のクララと恋に落ち結婚。直後に訪れた夫婦の危機を専門家のアドバイスで乗り切った彼は、同じように性の悩みを持つ学生のために“結婚講座”を開講します。 予想通り、やっぱりなかなか赤裸々です。それと同時に、こんなに早くからアメリカでは性の調査がされていたということが驚き。キンゼイ博士が調査を始めたのは、自身の体験に基づく小さな疑問から。それぞれの夫や妻が承知の上で友人の妻、友人の夫と関係を持つのは少し行き過ぎな気もしますが、男女問わず、性の解放を認識させたのは明らか。が、男性版は絶賛され、女性版が酷評されたのは、それでもまだ女性の性は認められていなかった、という当時は当たり前にあっただろう性差別を感じます。 ある意味、迷走も見せたキンゼイ博士の調査は、彼を理解し支え、常に側にいた妻クララとの深い愛情に着地。キンゼイ博士の調査は他人の性への好奇心もあっただろうけど、何よりもクララとの愛を深めるためにあったのかも。映画では描かれてないけれど、クララは世間から相当な非難を浴びたはず。それでもなお、夫を愛し続けたのは本当に凄い! |
| おかあさん |
| 製作 : 日本・1952年・98分 監督 : 成瀬巳喜男 脚本 : 水木洋子 出演 : 田中絹代、香川京子、三島雅夫、中北千枝子、榎並啓子、片山明彦、岡田英次 ★★★☆☆☆全国の小学生の作文から着想を得た水木洋子のオリジナル脚本を映画化。戦災で焼けた洗濯屋を再興しようと団結する一家。が、長男・進が病で亡くなり、父・良作も過労が原因で急死と不幸が相次ぐ事に。それでも友人の助けを借り、懸命に洗濯屋を切り盛りしようとする母・正子。そんな母を見て、長女・年子は様々な思いを巡らせます。 長男の死、父親の死、離れ離れに暮らすことになった姉妹、悲しい出来事が多いけれど、それをあまり感じさせない作りになっています。そう思えるのは、いつも頑張っているおかあさんの姿があるから。このおかあさんを演じる田中絹代がまた良い感じ。長女・年子は母親の再婚を危惧(本当はそんな様子は全くないのだけど)するけれど、おかあさんが再婚で幸せになれるのなら良いんじゃない?と思えます。とりあえず、年子はそんな心配をするより、ちょっとくらいはおかあさんを手伝いましょう(笑)。 今川焼の旗をアイスキャンディーの旗に変えて、季節の移り変わりを一瞬で見せた描写が絶妙。他にも、いきなりの「終」、花嫁衣装の勘違いエピソードもコミカルで愛らしいもの。この花嫁衣装を着る、年子演じる香川京子が本当に綺麗です。そして、次女と従兄弟の少年がこれまた可愛い!この二人の別れのシーンは優しい気持ちにさせてくれます。 |
| 女の歴史 |
| 製作 : 日本・1963年・126分 監督 : 成瀬巳喜男 脚本 : 笠原良三 出演 : 高峰秀子、宝田明、山崎努、賀原夏子、仲代達矢、淡路恵子、草笛光子 ★★★★☆☆フランス映画「女の一生」にヒントを得た笠原良三のオリジナルシナリオを映画化。美容室を経営し、義母・君子と息子・功平と3人暮らしをしている信子。ある日、キャバレーで出会った女性と結婚したいと言う功平に信子は反対し、彼は家を出ていく事に。そんな時、君子がかけた言葉で、信子は自身の義父で君子の夫・正次郎の死を思い出します。 高峰秀子演じる信子の半生を描いた女の一代記もの。現在と過去の映像が入り乱れますが、見せ方はとてもスムーズ。そして、義父の死、夫の死、息子の死、彼女の周りに死と涙が付き纏いますが、それでも彼女は力強く逞しく今日を生きます。言葉で書くと軽いけれど、夫の死後にひとりの女性の存在を知るなど意外に残酷。が、残酷さで言えば、信子の義母・君子の方が上手かと。彼女の夫(信子の義父)は浮気相手と思われる女性と共に自殺。怒りのやり場がどこにもありません。 それでも、その君子がかなりの救いと言える存在。夫を亡くし、息子(信子の夫)を亡くし、どんなに辛い時でも、常に前向きで無邪気。ラストでは三世代の女性だけが残りますが、今日という日をしっかりと地に足着けて生きています。ただただ女の強さを感じる1本。それにしても、若かりし頃の山崎努が愛嬌があってかなり可愛いです。 |
| 愛に関する短いフィルム |
| 製作 : ポーランド・1988年・87分 監督 : クシシュトフ・キェシロフスキー 脚本 : クシシュトフ・キェシロフスキー、クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 出演 : オルフ・ルバシェンク、グラジナ・シャポロフスカ、ステファニア・イバンスカ ★★★★☆☆毎晩8時半に、盗品の望遠鏡で向かいのアパートに住む女流画家マグダの部屋を覗き見ていた、19歳の郵便局員トメク。次々と違う男を部屋に連れ込むマグダに、トメクは執拗に無言電話をかけ続ける毎日。そんなある夜、恋人と別れてひとりで泣くマグダを見たトメクは、翌朝、偽の為替通知を彼女のポストに投函し、初めて声をかけます。 見つめる男トメクと見つめられる女マグダ。トメクの行動は変質的とも言えるけれど、彼の望みはただ愛するマグダを見ていたいだけ。その変質さは、裏を返せば限りなく純粋。が、マグダはその純粋さを弄び、傷つけることでしか彼の愛に向き合うことが出来ないのです。それはマグダが特別に冷酷なわけではなく、今までに経験した愛で深く傷つき、心を閉ざしてきた結果。本当は彼女だって純粋な愛を欲していただろうけど、信じるほどに希望は裏切られ、自らを守るために壁を作っていたように感じます。 トメクの望遠鏡で自分の生活空間を覗き、自分が孤独と共にあった事を改めて知ったマグダ。ただ、マグダがどんなに孤独に打ちのめされた状態であっても、トメクの優しい眼差しが常に向けられていた事も同時に知ります。なかなか理解し難い愛の形ではあるけれど、孤独な女、無垢な男に向けられたキェシロフスキー監督の視線は、愛しさに満ちています。 |
| アニマル・ファクトリー |
| 製作 : アメリカ・2000年・95分 監督 : スティーヴ・ブシェミ 脚本 : エドワード・バンカー、ジョン・ステップリング 出演 : エドワード・ファーロング、ウィレム・デフォー、ミッキー・ローク、シーモア・カッセル ★★☆☆☆☆スティーヴ・ブシェミの初監督作品。何不自由なく裕福な家庭で育ったロン・デッカー。が、彼は大麻所持の罪でサン・クエンティン州立刑務所に送られることに。そこで出会ったリーダー格の囚人アールのグループに入り、そのアールから可愛がられるロン。いつしか友情が芽生えたロンとアールは、二人で刑務所から脱走する企みを思いつきます。 まだあどけなさが残る青年ロンを通して描かれる刑務所内部。そこには対立するグループがあったり、ただ性欲を満たすためだけの関係を持つ者がいたりと様々。特に、新入りはレイプの対象となることも多々あります。新しく刑務所に入ったロンもそのひとり、ましてや演じるのがエドワード・ファーロングなら狙われるのも当然かと(笑)。そして、アール演じるウィレム・デフォー。この手の役柄は彼が最も得意とするところで、さすがの貫禄で難なく演じています。スキンヘッドもかなり良い感じで、インパクトあり。 ただ、映画タイトルから連想するような、暗くて重いという印象はあまり受けません。どちらかと言うと、爽やかさが感じられるほど妙にサッパリ。逆に、もっと暗くて重い映画にしても良かったんじゃないかな、と。それにしても、見事なまでの曲者俳優のオンパレード。狙いだとは思うけれど、エドワード・ファーロングだけが場違いで、浮いた存在のような感じです。 |
| 姑獲鳥の夏 |
| 製作 : 日本・2005年・123分 監督 : 実相寺昭雄 脚本 : 猪爪慎一 出演 : 堤真一、永瀬正敏、阿部寛、宮迫博之、原田知世、田中麗奈、いしだあゆみ ★★☆☆☆☆昭和27年、夏の東京。巷では産婦人科、久遠寺医院の不穏な噂が。それは、院長の娘・梗子が20ヶ月も身籠ったまま、彼女の夫・牧朗は1年半前に密室から失踪したというもの。“稀憚月報”の依頼で事件を取材する事になった小説家・関口は、友人で“憑物落とし”の顔を持つ古書店主・京極堂こと中禅寺秋彦に相談を持ちかけます。 一言で言うなら、やっぱり微妙…、といったところ。先に小説を読んでしまっているので、各キャラクターに独自のイメージが出来上がっているのが一番の問題だったと思われます。お気に入り榎さんを演じた阿部寛(阿部ちゃん自体は好きだけど)を始め、ハマリ役と思えるキャストはなし。原作が長すぎる事もあって、全体的に展開も駆け足気味に感じます。姑獲鳥(こかくちょう)とうぶめの違いも、姑獲鳥(こかくちょう)がうぶめになった経緯も、映画の説明だけでは分かりにくいんじゃないかな、と思います。 そして、効果音が決まって同じなので、ちょっと聞き飽きた感もあり。時折り挿入される月情報みたいなものもいらない気が。ただ、予告の時からヤバイとは思っていたけれど、いしだあゆみはかなり怖かったです。観る前から期待半分不安半分でしたが、遂に映画化された京極堂シリーズ第1弾はちょっと空回りで終わってしまったように思います。 |
| イン・ザ・プール |
| 製作 : 日本・2005年・101分 監督 : 三木聡 脚本 : 三木聡 出演 : 松尾スズキ、オダギリジョー、市川美和子、田辺誠一、MAIKO、森本レオ、岩松了 ★★★★☆☆伊良部総合病院の精神科医、伊良部一郎。彼はいつも白衣の下にヒョウ柄のシャツとブーツを合わせ、テキトーな診察でお気楽に過ごす日々。が、何故か彼のもとには、その不思議な魅力に引き込まれるように患者が次々に訪れる始末。“プール依存症”のエリート管理職、“継続性勃起性”の営業マンなどが、伊良部の診察室に駆け込んできます。 プール依存症、継続性勃起性、強迫神経性、そんな変わった病気を持つ人たち。が、一番とんでもなく変わっているのは、彼らを診る精神科医・伊良部一郎。その伊良部を演じた松尾スズキが本当にハマリ役。突拍子もない発言の数々は勿論、表情ひとつ仕種ひとつだけで笑わせてくれます。こんな精神科医を目の当たりにすると、自分の症状は特別変ではないのかも、と思えるほど。それと同時に、常識外れの伊良部の無邪気さに、ちょっとした憧れの気持ちまで芽生えてきます。 そして、伊良部と交流を深める内に、自然と病気を克服していく患者たち。その患者を演じた、オダギリジョー、市川美和子、田辺誠一もかなり良い味を出してます。この映画から教訓のようなものは得られないけれど、観終わった後に残るのは変(だけど有り難い)な癒し。日常生活に疲れた時に持ってこいの映画、とりあえず笑うべし! |
| アイランド |
| 製作 : アメリカ・2005年・136分 監督 : マイケル・ベイ 脚本 : カスピアン・トレッドウェル=オーウェン、アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー 出演 : ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン、ジャイモン・フンスー、スティーヴ・ブシェミ ★★★☆☆☆大気汚染から守られ、管理の行き届いた安全で快適なコミュニティで暮らすリンカーン。彼やその他の住人にとっての夢は、地上最後の楽園といわれる「アイランド」へ行くこと。そんなある日、換気口から入ってきた一匹の蝶を見て、外の空気は汚染されていないのではないかと疑問を抱いたリンカーンは、独自に調査を始め、重大な事実を知ります。 お約束通りにツッコミどころが満載。どんな状況に置かれても助かってしまうリンカーンとジョーダン、それとは逆に呆気なく死を迎える彼ら以外の人々。あまりの出来過ぎっぷりに思わず苦笑してしまうのですが、それでもやっぱりアクションはかなりの見もの。派手さだけは天下一品です。そして、脇を固めるスティーヴ・ブシェミがかなり良い感じ。彼が所持する衣装の数々に思わず笑いが込み上げます。「アルマゲドン」の時といい、マイケル・ベイ監督のブシェミの使い方はかなり好きかもしれません。 そのマイケル・ベイ監督と言えば「アルマゲドン」「パール・ハーバー」をまず思いつきますが、その2作よりは断然お勧め出来る映画。その2作のせいか、この映画があまり成功を収めていないのが少し勿体無くも感じます。アクション映画としての見どころは満載で、主演2人もなかなかのハマリ役。ツッコミ甲斐のある娯楽映画として、充分に楽しめます。 |
| 大いなる休暇 |
| 製作 : カナダ・2003年・110分 監督 : ジャン=フランソワ・プリオ 脚本 : ケン・スコット 出演 : レイモン・ブシャール、デヴィッド・ブータン、ブノワ・ブリエール、ピエール・コラン ★★★★☆☆カナダ、ケベック州サントマリ・ラモデルヌ島。人口125人のこの島は、島民のほとんどが失業手当に頼る生活を余儀なくされている状態。そんなある日、この島に大規模なプラスチック工場誘致の話が。建設には「島に定住する医師がいること」が絶対条件。が、島は長らく無医島。そんな島に青年医師クリストファーが1ヶ月だけ滞在する事になります。 クリケット、ビーフストロガノフ、初めての釣りなど、医師が望むものを叶えようとする島民たちの姿がとてもコミカル。それは医師に嘘を吐いている事になるけれど、その根底にあるのは人々の島を愛する気持ち、現在では失われつつある地域の力。そんな優しくて暖かい嘘には憎めないものがあります。その反面、高齢化や失業という厳しい現実もしっかり描写。が、そんな状況に置かれていても、ユーモアと誇りを忘れない島民たちにますます好感が持て、さらに医師への嘘が許せてしまえるのです。 医師が嘘に気付いた時は申し訳ない気持ちになったけれど、ラストは当然のように心地良い万々歳。出来過ぎと言えば出来過ぎ(ちょうど島には医師にピッタリの女性がいたりも)ですが、観終わった後の余韻は優しさでいっぱい。村の活気を表すオープニングとラストのファンタジックでちょっとエロ交じりの描写も、コミカルで微笑ましいです。 |